レポート | ・ 白菜と角煮 〜 国立故宮博物院 |
− 白菜と角煮 〜 国立故宮博物院 −
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台湾観光で見逃がせない名所の一つが台北にある国立故宮博物院です。中国明清朝の王宮であった紫禁城(しきんじょう)(故宮(こきゅう)ともいう)に残されていた歴代宮廷コレクションのうち、60万点以上にのぼる収蔵物が、中華民国政府の台湾への撤退に伴って1948年台湾へ渡りました。 国立故宮博物院はそれらの収蔵物を所蔵・展示する博物館で、世界四大博物館の一つに数えられています。常時 6,000点ぐらいが展示されていますが、特に有名なものを除いて3ヶ月に1回展示品が入れ替えられます。所蔵量が膨大なために、全ての所蔵品を見るには、8年余りかかるといわれます[1]。 故宮博物院は、台湾への観光ツアーでは必ず見学コースに入れられる名所ですが、一般の観光ツアーで割かれる見学時間はせいぜい2〜3時間程度でしょう。2〜3時間で何を見て回るか、混んでいる展覧エリアは避けるか後回しにしていかに効率良く回るか、故宮博物院はガイド泣かせの観光名所に違いありません。 今年(2012年)4月中旬に出かけた4日間の台北ツアーでは、故宮博物院見学が土曜日になったこともあって混んでいたので、ガイドさんは混雑が比較的少ない書画展覧エリアなどを中心に引率して回りました。そのため、前回の台湾旅行(2010年6月)で見れなかったエリアを見学することができました。 それでも、故宮博物院で人気中の人気である『白菜』と『角煮』を見ないわけにはゆかないというわけで、待ち行列に並ぶことになりました。幸い、この2点の文物は超人気ということで、同じ 302室に並べて展示してあります。並んで待つこと約30分。しかし、見る時間は1〜2分でした。フランス・パリ・ルーブル美術館のモナ・リザの絵を見るときのようでした。 清 翠玉白菜 『清 翠玉白菜』、いわゆる『白菜』は、翠玉(翡翠=ひすい)を彫刻して作られた作品で、作者不詳。大きさは、長18.7cm、幅9.1cm、厚さ5.07cm 。一部分がエメラルドグリーンで、他の部分が白色をした翡翠に出合った職人は、創意工夫と巧みな技芸を発揮して、瑞々しい白菜に彫り上げ、キリギリスとイナゴをはわせました。 この作品はもともと紫禁城内の永和宮に安置されていたといわれます。永和殿は、清朝第11代皇帝・光緒帝(こうしょてい、在位1875年〜1908年)の妃であった瑾妃(キンピ)の寝宮であり、白菜が清らかさを象徴し、キリギリスとイナゴが多産を象徴することから、瑾妃の嫁入り道具だったのではないかと推測する人もいるそうです。 白菜と昆虫という題材は、元代から明代初期の職業画家による草虫画の中によく見られ、民間で長い間喜ばれてきた吉祥を象徴する題材だったそうです。また、唐の時代の詩人・杜甫は、花園の野菜が庭園の管理をする園吏に見向きもされないと詩に詠み、政治環境の劣悪さや埋もれた才能の暗喩に、キャベツ類の野菜を用いたそうです。 ”しかし、宮廷工房の工匠であれ、翠玉白菜を製作した玉匠であれ、創意工夫と技芸を発揮し、出資者の好みに合わせた創作をしただけであったのは間違いない。が、関連資料の記載がないため、観る者に想像の余地が多く残されている。”と、故宮博物院の公式ホームページにあります[2]。 故宮博物院の公式ホームページで、写真を見ることが出来ますので是非ご覧下さい。拡大図を見れば、白菜の葉っぱの部分にキリギリスとイナゴが張り付いているのがはっきり見えます。『白菜』の写真を見る 清 肉形石 一方、『清 肉形石』、いわゆる『角煮』は、瑪瑙(めのう)の玉石を彫刻して作られた醤油で煮込んだ東坡肉(トンポーロウ、豚の角煮)にそっくりの作品です。作者は不詳。大きさは、高5.73cm、幅6.6cm、厚さ5.3cm。 瑪瑙類の鉱物は、自然の中で長い歳月を経るうちに違う時代に雑物の影響を受けて異なる色が生成され、一層ごとに違った色あいが現れるそうです。この肉片を製作した職人は、玉石の自然の筋目と色の変化に沿って彫刻し、皮、脂身、赤身肉がくっきりと分かれた、毛穴や肉の質感いずれも本物の豚の角煮に違わない作品を作り上げました。故宮博物院の公式ホームページで、写真を見ることが出来ますので是非ご覧下さ い。『角煮』の写真を見る 【参考サイト】 [1] 故宮博物院 - Wikipedia [2] 國立故宮博物院 National Palace Museum 公式ホームページ |
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