雑感  ・ロボット工学三原則   
− ロボット工学三原則 −
機械という言葉を辞書で引いてみると、例えば次のようにあります。〔機械〕=動力源から動力を受けて一定の運動を繰り返し、一定の仕事をする装置。主に、きっかけを与えると人力を借りずに自動的に動作するものをいう。からくり。
 
〔機械的〕=思考や意志を働かさず、型にはまって物事を行うさま。〔機械化〕=機械を用いることによって人手を省き、能率を高めること。人が外からの力によって操られ、自主性を失うこと(以上、三省堂・辞林21より)。
 
ということですから、『女性は産む機械』などという表現が全く不適切なことは明白です。
 
さて、確かに、機械の出現によって人間は過酷な仕事から解放されたり、生活が便利になったりしましたが、反面、人間性の喪失や人間疎外が叫ばれてきました。私たち が機械という言葉の響きに、かたい感じや冷たい感じを持つのは、単に機械が主として鋼などの金属でできているからということだけではなく、機械の持つ負の側面のイメージが連想されるからに違いないと思われます。
 
今日、ある範囲内で自律的に動作する機械、いわゆるロボットが出現し、多方面で活躍しています。とりわけ、日本はロボット先進国です。工場の生産ラインなどでは、産業用ロボットが人間に代わって溶接や組立作業などを行っています。
 
人の形をした二足歩行ロボットは、走ったりダンスをしたり、オーケストラを指揮したりするまでになりました。かわいいホビーロボットは安価になり、一般家庭に入り込んでいます。家事手伝いや要介護者の介護作業を手助けするロボットやホームセキュリティロボットも開発され始めています。
 
ロボットの語源は、チェコスロヴァキアの小説家カレル・チャペック(1890〜1938)が創作し、1920年に戯曲に使ったのが始まりだと言われます。チェコ語でrobotaは、『労働』を意味します。
 
アメリカの作家、アイザック・アジモフ(1920年〜1992年)が、1950年に刊行のSF短編小説集『われはロボット』の中で、『ロボット工学三原則』を提唱したことは、よく知られています。
 
アジモフは、まず、ロボットは人間に危害を加えてはならないし、人間に危害が及ぶのを見過ごしてはならないといいます。この第一原則に違反しない限り、ロボットは人間の命令に従わなければなりません。そして、これら第一原則、および第二原則に違反しない限り、ロボットは自分自身を守らなければならない、というのです。
 
1950年といえば、わが国では翌年の1951年(昭和26年)に、鉄腕アトムが漫画に登場した年です。戯曲や漫画などのフィクションの中での存在としてロボットが登場してまだ間もない、今から50数年前に、アジモフは、人間とロボットの共存のあり方について思いをめぐらしていたのです。
 
昨年(2006年)は、埼玉県ふじみ野市の市営プールで吸水口に小学二年生の女子児童が吸い込まれ死亡する事故やパロマ工業製のガス瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故の発覚などがありました。また、今月(2007年2月)に入って、リンナイ製のガス湯沸かし器でも一酸化炭素中毒事故が発生しました。
 
『ロボット工学三原則』は、ロボットを機械に置き換えれば、そのまま『ものづくりのあり方の三原則』になりますし、科学技術に置き換えれば、『科学技術のあり方の三原則』になります。
 
この冬の異常な暖かさは、我々に否応なしに地球温暖化問題を考えさせずにはおきません。今後の機械技術や科学技術が、アジモフの提唱した『ロボット工学三原則』の理念を貴重な指針として負の側面を払拭し、進展してくれることを願わずにはいられません。
 

  2007.02.14 
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