コラム | ・ にしもろ弁 〜 じょじょん |
− にしもろ弁 〜 じょじょん −
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いま、宮崎県小林市の移住促進PRムービーが話題になっていて、先日朝のTVワイドショーでも紹介されていました。1人のフランス人男性が、柔らかい語り口で同市の魅力を紹介するストーリー。 映像も美しくBGMも良く、さりげなく織り込まれたギャグが笑いを誘いますが、流ちょうなフランス語で喋っているように聞こえるのが実は、当地の方言である西諸弁(にしもろべん)とだいう仕掛けがミソ。最後で、 じゃっどん 気が ちぃちょったじゃろかい (ところで 気づいていただろうか) おいが ここずい 西諸弁で 喋っちょったとに (私がここまで西諸弁で喋っていたことに) と明かされます。 小林市を含む宮崎県南西部の、都城市、えびの市、北諸県郡三股町、西諸県郡高原町の、いわゆる諸県(もろかた)地方はかつて薩摩藩領であり、その地方の方言である諸県弁(西諸弁を含む)は、薩隅方言(奄美群島除く鹿児島県で話される方言)に分類されるか、類縁として扱われています。したがって、例えば、 あったらしい もったいない あまめ ゴキブリ あいがともっしゃげもした ありがとうございました さしかぶり 久しぶり すんくじら 隅っこ ずんだれ だらしない きばったもんせ 頑張ってください ぐゎんたれ 粗悪品 げんね 恥ずかしい ちんがらっ 物事が全てダメになる時に使う擬態語です。 てげてげ だいたい、適当の意。 などと言った諸県弁も、鹿児島県の北薩摩地方に住む本メルマガの著者には、まったっく馴染み深い方言なのです。ところで、小林市の移住促進PRムービーでは最後に、 じょじょんよかとこ、 住んみやん。 『大変いいところ、住んでみなさい』と、小林市への移住促進をPRしますが、非常にとか大変(英語のvery)という意味の『じょじょん』という言葉は、実は鹿児島県では、著者が住むさつま町付近(旧宮之城町を中心とする一帯)でしか使われていない方言なのです。 なぜだろうかと考えてみると、宮之城と宮崎県都城との歴史的な関わり合いが思い出されます。北郷氏(ほんごうし、都城島津氏)は、中世城郭『都城』(現在の都城市都島町城山公園)を拠点として勢力拡大を目指し、8代目の時代に都城盆地をほぼ統一します。 しかし、10代目の北郷時久の時、島津氏は天下統一を目指す豊臣秀吉の前に敗れ、その後の太閤検地や家臣団の所領替えにより、北郷氏は祁答院(けどういん、現在の鹿児島県さつま町)へ転封となり、伊集院氏が都城へ入りました。北郷時久は、都城を偲んで、新しい領地を『宮之城』と名づけたのでした。 その時、諸県地方で日常的に使われていた『じょじょん』という言葉が、旧宮之城町を中心とする一帯に伝わったのかも知れません。
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