雑感 | ・南洲残影を読んで |
− 南洲残影を読んで −
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南洲とは西郷隆盛のことです。奄美大島のほか、徳之島と沖永良部にも遠島の経験があった西郷隆盛は、自らの雅号を南洲(南のしま)としました。一昨日の9月24日は西郷隆盛の命日で、今年は、没後
130年・生誕180 年の記念の年ということもあって、講演会や催し物が行なわれたようです。 明治維新最大の功労者で大人物といわれた西郷隆盛が、何ゆえ新政府に対する反乱である西南戦争で朝敵となる道を選んだのか? 西南戦争で西郷にはどんな大義があったのか? 著者は未だ理解できていないところです。 勝ち目がないと分かっていて、大勢の死傷者を出すと分かっていて、西郷が挙兵せずにおれなかったのは、国恩(生まれ育った国から受ける恩)に報いずにはいられないという一途な情熱をどうしても抑えることができなかったからである。この『報国』の至情こそが西郷の大義であったと、江藤淳は、著書『南洲残影』(文藝春秋社)で述べています。 アジアにおける文明国間の提携の夢(征韓論)は潰(つい)え、明治新政府は盲目的にこの日本を西洋化させ、精神的に亡国の淵に追いやらんとしている。国を滅ぼそうとする天子と皇族と政府の姦謀(かんぼう)を粉砕するという報国のために、西郷は鹿児島を出立したといいます。 そして、後世の国民へ敢闘の記憶と無言のメッセージを遺(のこ)すため、西郷は途中で自害することなく、あくまで最後まで戦い抜きました(このことを勝海舟は、失敗した政治的人間が後世に残す思想というものの力といっています)。国家とは現に存する国民の専有物ではありえない。過去、現在、未来と綿々と続く垂直的なもの、それこそが西郷が守らんとした国家であった(岩田温著『日本人の歴史哲学』より)。 西南戦争の終結からちょうど 130年目の2007年9月24日、福田康夫自民党新総裁が誕生しました。グローバリズムや市場原理主義の高まりを懸念する世論の中で、いわゆる『国家の品格』の回復がいわれ、政治・外交では、国際貢献や北朝鮮問題等に絡んで防衛、憲法改正、日米安全保障条約等に関する論議が盛んになり、これからのわが国の姿を左右する問題となっています。 西南戦争に倒れた西郷の目指した『独立・自尊』は、わが国の今も変わらぬ議論のテーマであるように思います。 【参考図書】 ・江藤淳著『南洲残影』(文藝春秋社、1998年3月初版) ・岩田温著『日本人の歴史哲学』(展転社、2005年11月初版) ・藤原正彦著『国家の品格』(新潮新書、2005年11月初版) |
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2007.09.26 |
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