コラム | ・からすうり 〜 打ち出の小槌 |
− からすうり 〜 打ち出の小槌 −
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薩摩地方も朝晩冷え込むようになり、からすうり(烏瓜)の実も色づく、秋深まる時季になりました。自宅近くの藪で、ひょうたん形をしたからすうりを見つけました。からすうりは、ウリ科の蔓性多年草で、夏には美しいレース状の白花を咲かせます。 秋には、山野の林縁にからんだ蔓から、赤く熟した実を、葉が落ち尽くしたあともぶら下げます。その果肉はヒトの舌には舐めると一瞬甘みを感じるものの非常に苦く、人間の食用には適しません。鳥は摂食し、同時に種子を飲み込んで運ぶ場合もあるそうですが、名前と異なり、特にカラスの好物という観察例はほとんどないそうです。 うれしさもこどものくれしからすうり 森 澄雄 烏瓜こんがらがって藪の神 本橋定晴 烏瓜引けばこぞりて山の音 名倉光子 さて、からすうりの種子は財布に入れて携帯すると富みに通じる縁起物として重宝がられているのをご存知でしょうか。熟れたからすうりの実を割って種子を取り出して、きれいに水洗いすれば、小さな『打ち出の小槌』が現れるのです。 そんなからすうりの種子の話題について、『玉章(たまずさ)ともいいますね。』というコメントを頂いたので、早速調べてみますと、巻いた手紙の中ほどをひねり結んだ形に似ていることから、からすうりの種子の別名を『玉梓・玉章』ともいうとあります。はじめて知りました。 『玉梓・玉章』(たまずさ)は、手紙・便りの美称で、古代、使者が手紙を梓(あずさ)の木に結びつけて持参したことに由来し、多くは艶書とあります。ひょうたん形をしたからすうりを見つけ、『たまずさ』という新しい言葉との出合のあった一日でした。
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