コラム  ・芋とタコ   
− 芋とタコ −
『芋たこなんきん』は、今月(2006年10月)から始まったNHKの朝の連続ドラマのタイトルですね。作家の田辺聖子さんの半生をベースにしたホームドラマということですが、芋(いも)・蛸(タコ)・南瓜(かぼちゃ)は、大阪の女性が好む食材の代名詞だそうです。
 
南瓜はともかくとして、タコと芋は切っても切れない縁があるようです。先ず、タコ の煮付けに里芋(さといも)は欠かせません。里芋にタコの味がしみ込んで、タコの 料理が一層味わい深いものになります。
 
だからと言うわけではないでしょうが、タコが陸にあがって畑で芋を食べるという信じられない話しがあちこちにあるようです。インターネット検索してみると、面白い話しがたくさん見つかります。
 
青森県の平内のタコは畑で獲れるらしい。朝、タコが海からあがってきて、そのままズリズリズリズリと道路をわたって畑へ突入、そして植えてあるイモを食べるんだそうです。だから、漁師よりも農家の人の方がタコを多く獲っているかも知れないとか。
 
また、あるところでは、芋の盗難が頻発するので、隠しカメラで監視してたらタコが盗んでゆく決定的瞬間をキャッチしたとか。芋だけでなく大根も盗む。大根畑で見張っていたら、タコが盗みに来たので捕獲してタコも大根もゲットして食べたというのです。
 
日本国語大辞典(小学館)には、『いもーどろぼう【芋泥棒、芋泥坊】(名)蛸の異称。畑の芋を食うという俗説による。』とあるそうです。地名まであります。名古屋市緑区鳴海町蛸畑は、蛸が里芋畑を荒らすという伝説に由来する地名だそうです。
 
陸にあがるタコの話しは、中興俳人、与謝蕪村(1716〜1783)や炭大祇(たんたいぎ、1709〜1771年)らの俳句にも登場しますから、江戸中期頃からあった話しのようです。
 
     石女(うまづめ)の蛸追ひうつや芋はたけ  蕪村
 
     蛸追へば蟹も走るや芋畠  太祇
 
     大蛸や月にうかれて芋畠  洞雨
 
太祇の句によれば芋畠にあがっているのはどうやら、蛸だけではないようです。畑にあがって芋や大根を食べると言っても、あのクニャクニャした蛸が悪戦苦闘しながらどうやって掘るのでしょうか。
 
     カサカサと畑に蛸の良夜かな  ワシモ
  
なかなか信じてもらえないが、本当の話しだとか、残念ながらこれらは科学的に根拠のない、すべて想像して作られたメルヘンの世界の話しだとか諸説がありますが、果たして真実は? 本当の話しだとすれば、畑の中であんころ餅状態の土まみれになって、芋や大根を引きずっている蛸の姿を是非見てみたいものですね。
 

2006.10.25 
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