雑感  ・挨拶の形   
− 挨拶の形 −
ある空港前の某駐車場は、常時(毎日) 250台前後の車を預かっています。屋根付きが一泊 700円、屋根なしが 600円ですから、日に15〜16万円の売り上げという計算になります。
 
30数年前に空港が開港したとき、先祖代々からの畑を造成して作られたらしいこの駐車場は、造成や建屋建築に要した初期投資はとうに償却し終っているはずですし、必要経費といえば、雇っている2〜3人のアルバイトの人件費ぐらいですから、売り上げのほとんどが所得になっているはずです。
 
だから、オーナーはさぞ毎日ホクホク顔だろうと思いきや、子供たちが中学生ぐらいですから40歳前後と思われる若オーナー夫婦は愛想がないのです。必要最小限の挨拶があっても、きわめて事務的な印象です。
 
『仕事が楽しくなさそうだね。』『毎日同じ仕事の繰り返しだからでしょうか。』『営業をしなくても、黙っていても、お客さんが来てくれるから、確かに気持ちの張りっていうものがないかもね。』 などと、他人様のことをとやかく、不謹慎ながら連れ合いとの会話です。
 
一方、通勤途中に時々利用するコンビニのレジ係は実に愛想が良いのです。店手作りの弁当や焼立てのパンを出すコンビ二で、店内も綺麗で雰囲気も明るい店です。ニコニコ笑顔で、『いらっしゃいませ。』『ありがとうございます。』 朝だと『行っていらっしゃいませ。』です。
 
コンビ二は過当競争のなかで集客に凌ぎを削っています。だから、徹底した接遇の教育がなされているのでしょうか。このコンビ二の挨拶は事務的な印象を受けません。それでも、営業用のニコニコ笑顔であり、挨拶であることに変わりはないでしょうが、『行っていらっしゃいませ。』などと愛想顔でいわれると、ついその気になります。
 
子供たちを学校に送り出したあと慌しく駆けつけて来てレジに付き、時給いくらかで働いている、近くの主婦のパートタイマーの人でしょう。空港前の駐車場のオーナー夫妻のように月収何百万円という賃金ではないでしょうが、笑顔ひとつ、挨拶ひとつの違いで仕事が楽しそうにみえます。
 
挨拶は形で、その形を尽くすことが挨拶を極めるということではないでしょうか。コンビ二には営業上その形が必要であり、空港前の駐車場には必要ないということでしょうが、『形は心を呼び、心は形を呼ぶ』という言葉があるように、形のない挨拶は心をも虚(うつ)ろにするやも知れません。
 
かくいう自分の挨拶は、果たして形をなしているのだろうか? と自問するのであります。
 

2007.09.19 
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