『立てば芍薬、座れば牡丹・・・』と、芍薬も牡丹も美人の形容に使われてきましたが、中国では、芍薬の『花相』(花の宰相=王の政務の補佐)に対して、牡丹は『花王』と呼ばれているそうですから、それだけ豪華で風格があるということでしょう。牡丹も芍薬も同じボタン科・ボタン属に属しながら、おもしろいのは、芍薬は草なのに、牡丹は木に分類されていることです。ですから、英語で芍薬は
a peony、牡丹は a tree peony といいます。しかし、牡丹の園芸品種を育てるときには、草である芍薬に木である牡丹を接木するのだそうです。本来、牡丹は花期が4〜5月の花ですが、人々は殺風景な冬の風景のなかに豪華で艶やかな花を咲かせようと考えました。寒牡丹とか冬牡丹という種類の牡丹があるわけではありません。二季咲き性の牡丹の、春に付いた蕾を摘み取って花期を遅らせて冬に開花させたのを『寒牡丹』といい、春咲きの品種を人工的に温度調節することによって冬に花を咲かせたのを『冬牡丹』というそうです。牡丹にとってはえらい迷惑なことでしょうが、雪景色の藁苞(わらづと)のなかで、静かに花を咲かせる冬の牡丹には、確かに格別の風情があります。鹿児島市の仙巌園で開かれた島津牡丹展の会場を彩った冬牡丹をモデルにイラストを描きました。 (2007年01月)
|