旅行記      ・鹿児島県出水(2)− ツル(鶴)
 鹿児島県出水市荒崎の田圃(たんぼ)一帯には、毎年10月上旬頃から一万羽あまりのツルが渡来し、2月の中旬〜3月初め頃まで当地で越冬します。ツルは、シベリアから中国大陸を南下して韓国に渡り、壱岐を通り、長崎半島から八代海を経て出水に渡来するといわれています。
第一陣は10月上旬シベリア大陸バイカル湖付近から吹きだす冷たい北西の季節風に乗って飛来するといわれています。
                                                  (旅した日 2002年12月)
渡来するツルの種類と羽数

 出水平野に渡来するツルはマナヅルとナベヅルがそのほとんどを占めます。マナヅルは全長が約1.2m、目のまわりが赤いのが特徴です。体色は後頭部から首筋にかけて白く他は青みがかった灰色です。ナベヅルはツルとしては小型の部類で全長が約0.9mで、首の上半分が白く他は黒っぽい色をしています。

 2002年12月下旬の渡来数は、総数11,237羽(●マナヅル8,490羽、●ナベヅル2,237羽、●カナダヅル、クロヅル、ナベクロツル、アネハヅルなど10羽)。羽数調査は、地元の荘中学校や高尾野中学校のツルクラブの生徒さんが行っています。

     マナヅル            ナベヅル
ツル飛来の歴史
 出水にツルが飛来し始めたのは、島津藩による干拓が始まるようになって数十年後の元禄7年(1695年)頃といわれています。当時羽数は少なく、数十羽だったそうです。大正10年に天然記念物及び禁猟区の指定を受け、更に昭和27年には「特別天然記念物鹿児島県のツルおよびその渡来地」として指定を受けました。
その後は、行政や住民の手厚い保護を受けて1万羽あまりのツルがやってくるようになりました。指定面積は約245ヘクタールにのぼっています。
ツルの家族
 ツルの家族は、普通2羽から4羽で、5羽とか6羽の家族はいないそうです。夫婦2羽だけだったり、夫婦に幼鳥が1羽〜2羽加わったりです。なかには、家族に死に別れて3羽あるいは2羽となった家族もあるようです。いつも家族一緒にいるとは限らないで、餌を求めて飛び立つとき別々の場所から飛び立ち餌場で一緒になるような行動もするそうです。危険に遭遇したとき一家全滅を防ぐ習性と考えられています。子供の面倒は夫婦が協力してみるそうです。
ツルの愛情物語
 ツルは一雄一雌制で夫婦はとても仲が良く、何かの理由でどちらかが欠けるまで生涯共に暮らすそうです。昭和48年に、次のような愛情物語があったそうです。羽を傷つけた一羽の雄ツルが保護されました。相手の雌ツルは、保護舎上空を鳴きながら旋回し続けたそうです。その夫婦ツルは、なきなき別々の場所で冬を越すことになりました。やがて3月になって他のツルたちがシベリアへ帰った後も、雌ツルは帰ろうとせず5月まで出水に残ったそうです。その年の冬にふたたび第一陣としてやって来た相手の雌ツルは、飛来した夜中に保護舎上空を鳴きながら旋回したそうです。やがて雄ツルも元気になり保護舎から放たれ、その夫婦ツルはその冬を共に越冬し3月には仲間と一緒にシベリアに帰って行ったそうです。
これからの課題
 出水市の荒崎一帯に集中して飛来するため、ツルの間にもしも感染症が広まったら、短期間のうちにマナヅルとナベツルが絶滅する恐れがあるそうです。
ツル保護と農作物への被害対策として人間の手によって餌を与えてきた結果、餌離れができず、ツルの半野生化がすすんでいるのではないかという指摘があり、ツルの保護と農作物への被害対策とあわせて今後課題とされているそうです
●出水市ツル観察センター
 所在地/出水市(いずみし)荘(しょう)2478-4、駐車場/あり(200台)、
 交通アクセス/JR出水(いずみ)駅から車で約20分、
 営業時間/9:00〜17:00、休日/なし、料金/入館料210円
●出水市ツル観察センター前の給餌場では、ナベヅルもマナヅルもみ
 んないっしょくたになって密集しています。ちょっと気持ち悪いくらい混み
 合っています。
●給餌場を離れた田圃では、夫婦連れのツルが仲良く餌をついばんで
 いる光景があちこちで見られます。
出水市ツル観察センター ツルの種類と羽数が表示されています。