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古都プナカのツェチュ − ブータン王国(写真寄稿) 2012.03
 (写真(コメントも含め)は、N氏の提供によります)
古都プナカのツェチュ
ゾンカク(県)所属の踊り子連、踊る時だけラチュはこのように使います。
古都プナカは、
1955年に首都がティンプーに移されるまでブータン王国の
首都だったところです。
ハレの日に着る織の細かいキラと左肩からかけるラチュ。
 そのプナカで行われた
ツェチュ(2012年3月3日〜5日)の写真が、ブータン在住のNさんから
届きましたので、アップロードさせて頂きました。
( Nさん、ありがとうございました。)
午前中の数時間だけ開帳されたトンドルを大人数で巻いていきます。
ツェチュ(tshechu)は、
ブータン各地で催されるお祭りで、カラフルな衣装と仮面を
つけた踊りとして有名です。
黒い面のアツァラは、ひょうきんな動作をしてみんなを笑わせます。
ツェチュは
年間を通じてブータン国内のどこかのゾン(県庁と僧院が一緒になった施設)や
寺院で行われています。
今年の開帳は、ゾン所蔵のペマ・リンパ(Pema Linpa)のトンドル。開帳日は毎年異なります。今回は最終日でした。
どのツェチュにも
共通しているのは、太陰暦で月の10日目に当たる日に
行なわれるということです。
僧が踊るチャムを見つめる人々も、ゾン内ですので正装です。
そもそも、
ツェチュという言葉自体が『10日』という意味を
表しています。
グル・リンポチェを迎えるためジャリンを吹くチップデールを着た男性の僧。
そして、10日は、
8世紀後半、ブータンに仏教を伝えたグル・リンポチェの生れた日と
一致するとされています。
前の見えないお面をつけた黄色い法衣の人形がグル・リンポチェです。手をひかれないと進めないので付添いがいます。
また、師の生涯に起きた
重要な出来事が全て月の10日に起こっており、師が月の10日に法要を行う人のところに
戻ってくると言い残したと伝えられています。
弓矢を持ったデチュンと呼ばれる狩人は、人々からお布施を集めます。狩人は、悪魔の象徴。
グル・リンポチェ(パドマサンババ)は、
インドからチベットやブータンに仏教を伝えたとされる高僧で、釈迦の転生仏とされ、
ブータンで絶大な人気を誇っています。
赤い布で頭と首を巻き、お面の口から前方が見えるように、着けます。お面はトラ。
ツェチュは、
様々な村から人が集まり、『チャム』と呼ばれる宗教的な仮面舞踏(マスクダンス)を
見る一大イベントです。
お面は、ラクシャランゴと呼ばれる雄牛の一種。頭にゲルツエンがあるのは踊り連のリーダの印。
『チャム』は、
グル・リンポチェの生涯の出来事を称えたもので、ラマ教の
恩恵を受けているそうです。
ラクシャランゴのお面の色は、赤と青
チャムは娯楽を目的とした
舞踊ではなく、宗教教義に基づく儀式や法要を表し、舞踊によって、難しい宗教の教えを一般の人々に
親しみやすく、分かりやすい形で伝える舞踊です。
チャムには数多くの種類があります。これはンガチャム
チャムの踊り手は、
仮面をつけた瞬間から人間ではなく、神になり、生きとし生けるものすべてから
悲しみや苦しみが去りますようにと祈りながら踊ります。
ンガチャムの踊りは、時に激しく体を捻りながら続きます。
そして、
ブータンの人たちは、ツェチュに参加し、『チャム』(仮面舞踏)を見て、
恩恵を受けて罪を洗い流すのです。
踊りは、季節、場所を問わず素足です。
ツェチュは、
ゾンで行われる規模の大きなものから、村にあるお寺でその村の人々のために
行われる小さなものまで様々です。
お面は百獣の王ライオン、踊りはじめるのは、ライオン面の僧からと決まっています。
期間も、
有名なパロのツェチュのように5日間のところもあれば、
3日間ほどのところもあります。
背中をむけているのはトナカイの面、頭の旗は、副リーダの印。左はラクシャランゴ、右はトラ。右端は伝統靴のアツァラ。
祭りにはまた、
色とりどりのダンスや余興があり、チャムの合間には村の女性たちによる民謡や
踊りなどが披露されるそうです。
ふくろうの面をつけたンガチャムの踊り。
これらの一連の演目は法要ですから
拍手などは一切しないのだそうです。僧院では僧がチャムを踊り、
遠く離れた村では僧と村人が共に踊ります。
ツェチュのオープニング。Zhungdra(ゾンカクダンサー)たちが下を向いているのは、正面のトンドルに敬意を表すためです。
宗教行事ですが、
堅苦しいことばかりではなく、日本の祭りや縁日などと
似たところもあるようです。
踊りには、祈りを思わせる所作もあります。
会場に着いてゴザを敷いて
席を取ると、果物をだして早速おやつを食べたり、子供たちは出店で売っているお菓子を
買うお金を親におねだりしたりだそうです。
山岳地帯から来た防寒帽子の女性たちが着ているキラは、hothra(ホツァ)と呼ばれる織の細かな高級品です。
また、着道楽で知られる
ブータンの人たちにとって、ツェチュはとっておきのキラ(女性の民族衣装)やゴ(男性の民族衣装)を
披露する絶好のチャンスなのです。
弓と矢を持って踊られるDha cham(ダ チャム)、この踊り連は伝統靴を履いています。
観光客は、
会場に溢れるユニークでカラフルで楽しいブータンの
衣装文化にも魅了されます。
左の赤帽は、素足で踊られたPazab、右はDha chamの踊りを終えひきあげるところです。
ツェチュのハイライトのひとつが、
トンドルのご開帳です。
 『トン』とは見る、『ドル』とは解脱を意味し、『見るだけで解脱が出来る』と
いう大変ご利益のある仏像の大掛軸(大仏画)です
ザナガチャム(Zhanaga Cham)を踊る5人の閻魔が登場、あの世に続く道を象徴しています。
この大仏画は、一年のうちでこの日だけにしか
開帳されないという貴重なもので、多くの人が詰めかけている中、色鮮やかなアップリケの大掛軸が
開かれると、会場は荘厳な雰囲気に包み込まれます。
赤のお面は、ツォリンと呼ばれています。
但し、 トンドルの開帳は、
夜明け前に行われます。そのため、このページの写真も、トンドルを
収納する場面から始まっています。
青面はゲインと呼ばれ女性、赤面は男性です。対になって静かな踊りが続きます。
ツェチュにどうしても欠かすことの
できない役が『アツァラ』と呼ばれる道化師だそうです。チャム(仮面舞踏)の合間に、いろいろと滑稽な
仕草をして人々を笑わせ、お祭り気分を盛り上げます。
ヤクチャムの音楽と共に閻魔大王のお出ましです。
赤ら顔に大きな鼻の仮面を
つけた『アツァラ』が、手にした男根型の棒で若い女の子を
追い掛け回したりするそうです。
高さは推定4〜5メートルくらい、右にこの世の行状を映す鏡を持っています。
そして、チャムの演目の中でも
特に人気があるのが閻魔(えんま)大王が登場する仮面舞踏です。閻魔大王は、
仮面の前面上に五個のドクロを飾っています。
閻魔大王の顔は、なかなか見えません。人々の前をゆっくりと右回りに一周していきます。
死後善人と悪人が閻魔大王の裁きを
受けるこの舞踏劇は、見るものに因果応報の理を教える目的があります。 輪廻信仰を信じるブータンの
人たちにとって、何に生まれ変わるか決して他人事ではありません。
閻魔大王が人々の前を一周し終えると行列をつくり、閻魔大王の前で頭に紙幣を押し付けるブータン式のお布施をします。
 
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