端午の節句考  ・端午の節句と「あくまき」   


  五月五日の端午の節句には、菖蒲湯や菖蒲飾り、旗のぼりやこいのぼり、「柏もち」や「ちまき」など、いろいろな催しごとがあります。鹿児島では、ちまきとして「あくまき」を食べます。端午の節句のいろいろな催しごとの由来を調べてみました。そして、「あくまき」の紹介記事を記載しました。                                                                   (2003年5月)

端午の節句

 端午とは、五月五日のことです。節句とは季節の節目、節目に神様にお供え物をする「節供(せちく)」が始まりと言われ、年中行事を行う日のうちの特に重要な日のことです。
 奈良時代の頃より、五月五日は、病気や災厄をさけるための行事が行われる重要な祭日でした。宮廷では、この日に、菖蒲(しょうぶ)を飾り、蓬(よもぎ)などの薬草をくばったりしました。また、病気や災を招く悪鬼を退治する意味で、馬から弓を射る儀式などの催しも行われていました。
 その後、そのような催しは、菖蒲でたたきあう菖蒲打(しょうぶうち)という子供の遊びなどに変っていきました。また、菖蒲や蓬を屋根や軒先にふいたり、菖蒲酒を飲んだりするようになりました。
 江戸時代になると端午の節句は、男の子の誕生を祝う日になり、武士の間では甲冑(かっちゅう)や刀、槍などの武具を飾り、玄関先に旗幟(はたのぼり)や吹流しを立てて祝いました。一般の人々にもこの行事が取り入れられるようになり、
紙で作ったカブト  菖蒲とよもぎ  これは花菖蒲です
武士の旗幟に対抗して、町人の間で鯉幟(こいのぼり)が飾られるようになりました。端午の節句は、男の子の誕生を祝う行事として今に受け継がれています。


菖蒲と花菖蒲

  上の写真の菖蒲は、5月4日に町の花屋さんの店先に置いてあるのを買ってきて、写真を撮ったものです(5月5日、お風呂に使います)。ハーブのように、強い香りがします。その薬草としての効用から、菖蒲湯、菖蒲酒、菖蒲枕などに使われるようになりました。ところで、この本来の菖蒲(しょうぶ)は、里芋(さといも)科の多年草です。初夏に花は咲かせますが、茶色の地味な花で、 下から伸びてきた葉っぱが2つに分岐 する場所にさりげなく花穂をつけます。一方、きれいな花の咲く花菖蒲(はなしょうぶ)は、葉が菖蒲に似ていているのでそう呼ばれるのであって、菖蒲とは全く異なる文目(あやめ)科に属します。

◇◆◇ 菖蒲の束で女性のお尻叩き
  石川県内では子供たちが菖蒲の束で既婚女性のお尻を叩く行事もあったそうです。菖蒲の持つ力を借りて子宝に恵まれるように祈願したものだと言われているとのことです。是非、叩かせてもらいたいものですが、大人はできないのでしょうか? 石川県内では、昔からの習慣や伝統が大切に継承されているのでしょう。


柏もち・ちまき


柏もち
「柏もち」「ちまき」も端午の節句の祝い餅です。関東では「柏もち」が、関西では「ちまき」が一般的です。
  大昔の人は穀類を食べるとき、皿の代わりに木の葉を使っていました。その葉のことを「炊ぎ葉(かしぎは)」といい、「柏(かしわ)」という名前の由来といわれています。「柏もち」は柏の若葉に、白もちをくるんだものです。男の子の成長を祝う日に柏もちを食べるようになったのは、柏の葉の性質に由来すると言われています。柏の葉は、新しい芽が出てこないと古い葉が落ちないことから、「家系が絶えない」という縁起をかついで柏もちを食べるようになったと言われています。
 紀元前の中国の楚国に屈原(くつげん)という愛国の政治家がいましたが、国の行く末を嘆き川に身を投じました。人々は、彼を弔い、命日の五月五日に、竹筒に米を入れて川に投じました。川に住む竜がそれを盗んで食べないように米を「せんだん」の葉で包んだそうです。それが、「ちまき」のはじまりとされています。平安時代に日本に伝わり、宮中での端午の儀式に使われるようになりました。
あくまき−鹿児島のちまき


あくまき
  「あくまき」は、木や竹を燃やした灰からとった灰汁(あく)に浸したもち米を、孟宗竹の皮で包んで、灰汁水で数時間煮込んで作る鹿児島独特の餅です。(灰といっても桜島の灰ではありません!)

あくまきの歴史
  「あくまき」の歴史は古いようです。平家の落武者が伝えたものだとか、陣中で焚火のあとに置いていた握り飯に、たまたま雨が降って灰汁が染み込み、握り飯が腐らなかったことが起こりだとか言い伝えられています。灰汁には殺菌効果があり、あくまきは日持ちがよいため保存食としての役割もありました。秀吉の朝鮮の役や、関ケ原の戦いで薩摩兵児(へこ)は兵糧食として携帯しました。兵糧食であったものが、一般家庭でも食べられるようになり、五月の節句の行事には、欠かせないものとなりました。
  灰汁には多くのミネラルが含まれていて、からだに優しいアルカリ食品です。

あくまきの食べ方
色は写真のように、べっこう色で、温泉卵のような独特の香りがあります。 包丁やナイフで切ると刃にくっ付くので、 糸などを巻き付けて、食べ易い大きさに切り分け、きな粉に黒砂糖粉や蜂蜜などを混ぜたもの(味出しに食塩を少々)をまぶしてたべます。醤油を付けて食べる人もいます。

あくまきの作り方
@ざるに布を敷き、木や竹を燃やしたあとの灰をのせ、灰の2倍の量の湯を流して灰汁を取ります。
Aもち米を洗って、水で2倍に薄めた灰汁水の中に一晩漬けて置きます。
B乾燥した孟宗竹の皮を水に一晩浸しておき、柔らかくなった竹皮を3つ折りにして袋を作ります。
C竹皮でつくった袋に、灰汁水に漬けて置いたもち米を詰めます。

きな粉・黒砂糖(粉)
D口を閉じて、三ヵ所をシュロの葉や竹の皮を裂いて作ったヒモで縛ります。
Eそれを釜の中に並べ、薄めた灰汁水を満たします。
F釜に蓋をして、強火で数時間(少なくとも3時間以上)炊きます。途中水気がなくなったら、灰汁水を継ぎ足します。


あくまき・あれこれ

「あくまき」について、以前こんなお便りを頂いたことがあります。

『なんだか、食べたくないような、食べたいような、不思議な感じです。そして、実はお客様に、
毎年頂いていて、多い時は5本ぐらいになっていましたが、今ひとつ食べ方がわからず、
他のお客様にもらって頂いていたのです。そのお客様も、味が有るような? 無いような?
不思議な感覚だというので、少しだけ食べて、残りは冷凍庫の中だったそうです。』

確かに、贈る人は美味しく食べて頂けるという思いで贈るのですが、食べ慣れていないことには
そういう話になりますね。「あくまき」にまつわる良くある話です。

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