コラム  ・ツルの絆   
 
ツルの絆
日本最大のツル(鶴)の渡来地である出水に、今シーズンも1万羽を超えるツルが越冬のためシベリアから渡来してきています。2023年12月2日の羽数調査では、11,410羽が確認されたそうです。

越冬地の1万羽を超えるツルの群れは、人間社会でいえば、市町村単位の大きなコミュニティの群れといえます。餌をついばむときは家族単位で、渡りのときは、数家族が集まった群で、いわば集落単位の群れといえるでしょう。

ツルのペアは基本的に生涯解消されないといわれます。つまり、一度夫婦になると一生涯添い遂げるというわけです。ツルは、夫婦の絆だけでなく、家族の絆も強い生き物だといわれます。

出水平野では、春にほぼすべてのツルが北に帰りますが、例年、けがをしたり体調不良だったりで十分に飛べなくなって、数羽が居残りするそうです。帰るタイミングを逸した幼鳥を泣く泣くおいて帰らざるを得ない家族だってあることでしょう。

今シーズンの初渡来は、2023年10月17日にナベヅル5羽が確認されたそうです。そのシーズンに真っ先に飛んで来るいわゆる第一陣のツルの群れは、春に家族のだれかを残して北帰行せざるを得なかった家族の群れだという話しを聞いたことがあります。

これと似たような話を最近聞きました。出水市と薩摩郡さつま町の境にそびえる標高1,067mの紫尾山のさつま町側の麓に平川という地区があります。ツルの北帰行の時期、この平川地区の集落に一羽のツルが降り立ちました。

ケガをしていたか、体調不良だったかで北帰行を断念して降り立ったのだそうです。このツルは同集落で夏を越しました。地元の人たちの保護もあったのでしょう。そして、10月になるとなんと、連れ合いと思われるもう一羽が飛来してきてペアで寄り添う姿が見られたのだそうです。

このようなツルの絆の話は、童話「ツルの恩返し」の心を彷彿とさせます。今シーズンも鳥インフルエンザなどが発生することなく、越冬中のツルの全羽が無事北帰行を果たして欲しいものです。

  2024.01.05
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