コラム  ・俳句鑑賞『夏の果』』   
 
俳句鑑賞『夏の果』
夏の果/夏果つ、夏終る、夏行く、夏逝く、夏惜しむ(夏=晩夏の季語)夏の終わりのこと。日本の詩歌の伝統では、去り行く季節を惜しむのは、春・秋のものでしたが、現代では、夏もまた行動的な季節であり、7月の暑さで海山のシーズンが去ることを惜しむ心から、「夏惜しむ」というようになりました。
 
今年(2022年)は、8月7日(日)が立秋ですから、お盆や戦争の記憶(広島平和記念日8月6日、長崎平和記念日8月9日)とも結びついた8月の暑さは秋(=初秋)の季語になります。
 
また、秋近し、秋待つ、秋隣、夜の秋、という季語もやはり夏(=晩夏)の季語ですが、これらは晩夏の涼しさのほうにウエイトを置いた季語で、夏の果は、まだ暑さはつづくけれど、というように、夏の暑さを感じながら、去る夏に思いを寄せる感じがあります。
 
  またといふ言葉頼みて夏果てぬ  谷口桂子
  マネキンの手足抜かれて夏の果  藤森ひろみ
  同窓会の美しい嘘夏果てる    橋本純子
  夏惜む蟹より紅く爪染めて    樋笠文
  ひとり遊びの少年に酸い夏終る  佐藤鬼房
 
  夏の果出さずじまひの文ひとつ  山田弘子
  夏の果て足のうらには海の色   稲用飛燕
  思ひ出の始るときが夏の果    後藤立夫
  夏の果てキーホルダーが多すぎる 山本純子
  生大豆噛んだやうなる夏の果   山田六甲
 
  釘打って浜茶屋閉ざす夏の果   斉藤やす子
  つれ笑ひせしがそのまま夏の果  水野恒彦
  遮断機に道を切られて夏の果   木内美保子
  忘れ物して来たやうな夏の果   山田愛子
  お互ひを解き放ちたる夏の果   竹田ひろ子
   

  2022.07.27
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