コラム  ・蛙の話し   
 
蛙の話し
 
§1 蛙の目借時
 
今シーズンの冬は南九州でも正月明けからずっと寒さが続き、2月も三寒四温という期間がなかったように思います。冬の朝は、寒くてなかなかベッドから出られないのが悩みです。
 
ところが、人間勝手なもので、春になって暖かくなると『春眠暁を覚えず』(春の夜の眠りは、まことに眠り心地がいいので、朝が来たことにも気付かず、つい寝過ごしてしまいそうである)とあるように、今度は眠たくってベッドから出づらいです。
 
春の季語に『蛙の目借時』(かはずのめかりどき)という季語があります。春が深まり、眠気をもよおすような頃のことをいう俳句独特の言葉で、春眠くなるのは蛙が人間の目を借りに来るからだというのです。
 
『めかり』は、本来は蛙の求愛行動である『妻狩り』(めかり)の意味だといわれ、『目借り』の面白味を楽しんで俳人に好まれてきた季語です。温んだ水から覗く蛙の目にはいかにも眠たくなるような雰囲気があります。
 
鎌倉時代の歌集に、藤原光俊という人の詠んだ『つとめすと寝もせで夜を明かす身にめかる蛙の心なきこそ』という和歌があるそうですから、『蛙の目借時』という言葉はずいぶん古くからあったわけです。
 
ところで、眠りの貸し借りといえば、『睡眠負債』という言葉をご存知でしょうか。毎日の睡眠不足を放っておくと、睡眠不足が積み重なって『借金』のように膨れ上がり、健康に取り返しのつかない悪影響を及ぼす結果になるという意味の言葉です。
 
睡眠不足で疲労回復しない状態が続くと、判断力や記憶力の低下を招くだけでなく、自律神経の乱れや高血圧や不整脈などの体調不良を引き起こす原因にもなり兼ねないそうですから、眠いのを蛙のせいなどにしないで、睡眠はちゃんと取りましょう。
 
§2 春蛙秋蝉(しゅんあしゅうぜん)
 
七十二候(しちじゅうにこう)によると、今年(2022年)は5月5日が『蛙始鳴』(かえるはじめてなく)だそうです。またこの日は立夏で、暦の上では夏に入ります。南九州ではとっくに蛙は鳴いているのですが、これから夜になると一斉に鳴く、いわゆる蛙の大合唱がいっそう激しくなります。
 
『春蛙秋蝉』(しゅんあしゅうぜん)という四字熟語があります。やかましく鳴く春のかえると秋のせみの意から、『うるさいだけで、なんの役にも立たない無用な言論のたとえ』として使われる熟語です。
 
人間にとってはうるさいだけの蛙の鳴き声ですが、当の蛙にとっては、何のために鳴くのでしょうか。そもそも蛙は、ごく一部の種類を除いて、鳴くのはオスに限られ、鳴く目的には次の3つがあります。
 
  (1)繁殖期におけるオスのメスに対する求愛行動として鳴く。
  (2)オスが他のオスに対して縄張りを主張するために鳴く。
  (3)自分がオスであることを知らせるために鳴く。
 
オスは大きな声でメスを呼び、メスは同種の蛙の声を聞いて、気に入った声のオス蛙に近づくわけです。メスだと思ってしがみついたら、実はオスだった、なんていうことがあるそうですから、自分がオスであることを知らせる目的もあるわけです。
 
蛙は一斉に鳴きます。すなわち、大合唱になるわけです。そして、昼間鳴くことはなく、鳴くのは決まって夜です。昼間鳴くと捕食者に、自分がいる位置を簡単に特定されてしまため、夜鳴きます。
 
また一斉に鳴くのは、一つの個体で鳴くよりも、みんなで一斉に鳴いた方が、どこにいるのか分からなくなり、天敵をかく乱することが出来るからです。一斉に鳴くのですが、ニホンアマガエルは、互いの声が重ならないように、タイミングをずらしたり、輪唱したりしているという、大学の研究結果があるそうです。
 
そして、疲れてくると一斉に鳴き止みます。また、天敵が現れると、それに気づいた蛙がまず鳴き止みます。すると周りの蛙たちもそれを察知して、集団として一斉に鳴き止むのだそうです。『春蛙秋蝉』などといわれてはいますが、蛙は高度な法則性のもとで鳴いているわけです。
 
§3 ずれっ子の子蛙
 
蛙は、鳴くのはオスに限られ、鳴く目的には、(1)繁殖期におけるオスのメスに対する求愛行動として鳴く、(2)オスが他のオスに対して縄張りを主張するために鳴く、(3)自分がオスであることを知らせるために鳴く、の3つがあると書きました。
 
この他に、蛙は雨が近づくと鳴くと言われます。アマガエルが文字通り『雨蛙』と言われる由縁です。雨が近づくと蛙が鳴くと考えられてきたのは、蛙の皮膚呼吸と関係があるのだそうです。
 
蛙は全呼吸量の30〜50%が皮膚呼吸なため、蛙の皮膚は湿度に敏感なわけです。湿度が高くなると皮膚呼吸がより活動的になり、鳴くことが多いとみられていますが、実のところは、はっきりした理由は分かっていません。
 
『まんが日本昔ばなし』に、『ずれっ子の子蛙』という話しがあります。
 
むかしむかしある所に、アマガエルの親子がすんでいました。子ガエルは大変なヘソ曲がりで、いつも親ガエルの言いつけと反対のことばかりやっていました。いよいよ親ガエルに寿命がきて死ぬときがきました。
 
親ガエルは、墓が流されないように、山の上に墓を作ってもらいたいと考えていました。しかし、こいつ(子ガエル)は言いつけと反対のことをするから・・・と考え、親ガエルは、『墓は川のそばに建ててくれ』と言い残して死んでいきました。
 
ところが、子ガエルはこの時になって反省し、『遺言は守らなければならん』と会心し、本当に川のそばに墓を建ててしまいました。そのため、雨が近づくと『親の墓が流されないように』、蛙は泣くようになったのだそうです。
 
(1)ニホンアマガエル - Wikipedia
(2)まんが日本昔ばなし〜データーベース〜
  

  2022.06.01
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