コラム | ・俳句鑑賞『自然薯、とろろ』 |
− 俳句鑑賞『自然薯、とろろ』 −
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自然薯(じねんじょ)、とろろ、共に秋の季語である。自然薯は、ヤマノイモ科の蔓性多年草の根茎であり、山芋(やまいも)ともいう。栽培される長芋に対し、山野に自生していることから自然薯の名がある。根は長大で多肉、地下に深く下りていて、掘り出すのに技術を要する。栽培される長芋より粘りが強い。 この橋を自然薯掘りも酒買ひも 高野素十 自然薯を暴れぬように藁苞(つと)のなかに 杉本雷造 狐ききをり自然薯掘のひとり言 森澄雄 相悪き自然薯にして旨かりし 能村登四郎 山の駅自然薯掘りが乗り込みぬ 宮嵜亀 自然薯をさぐり来世も男なり 斎藤棹歌 歌好きの自然薯掘りでありにけり 高橋将夫 とろろは、自然薯または長芋をすり下ろしたもの。汁物にしてとろろ汁、吸物にして吸いとろ、麦飯にかけて麦とろ、などとして食べられる。とろろをマグロのぶつ切りにかけた料理を山かけという。山かけ蕎麦や山かけうどんなど、とろろをかけることを山かけと呼ぶものもある。 うまの合ふ夫婦となりてとろろ飯 高澤良一 どことなく似てきし夫婦とろろ汁 高村洋子 風をきく山家の暮しとろろ汁 出口貴美子 とろろ汁豊かな昭和にもう会えぬ 貝森光洋 早食ひを諫むる間なしとろろ汁 田中貞雄 とろろ汁と決めて鞠子の宿に入る 落合絹代 丁子屋に芭蕉さんの間とろろ汁 近藤幸三郎 |
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