コラム | ・俳句鑑賞『冬の衣類』 |
− 俳句鑑賞『冬の衣類』 −
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南国・鹿児島も朝夕はいっきに寒くなり、居間にはコタツを出しています。クローゼットの衣服を夏服、合着(あいぎ)から冬服に入れ替えました。仕事も長袖シャツになり、クールビズも10月で終わって、11月からネクタイ着用です。 冬服へ『衣替え』をしたわけですが、俳句では『更衣(ころもがえ)』は、冬服や合着から夏服へ着替えるときの夏の季語です。『後の更衣(のちのころもがえ)』という季語もありますが、こちらは夏服から秋の服に着替えることをいう秋の季語です。 すなわち、冬服へ着替えることを言う季語はないわけです。そのかわり、衣類や着用に関する季語は、他の季節より冬が圧倒的に多いです。防寒のため、衣類が他の季節よりは多いということです。 『ねんねこ』。乳幼児を背負うときに用いる防寒用の子守半纏(はんてん)で膝上まですっぽり覆います。赤ん坊を俗に「ねんねこ」といったことに由来します。近年は乳幼児を背負うことも少なくなりました。 ねんねこの子の眼も沖を見てゐたり 畠山譲二 ねんねこの手が吊革を握りたがる 塩川雄三 『着ぶくれ』。何枚も重ね着したり分厚いものを着たりして体が膨れて見えること。どうしても動作が鈍くなった印象、無精な印象はまぬがれません。 着ぶくれて怖ろしきものなくなりぬ 原田 喬 着ぶくれて他人のやうな首がある 二川茂徳 『毛皮』。毛のついた獣皮をなめしたもの。衣服や襟巻や外套に仕立てて防寒用にしたり、敷物にしたりします。動物保護が叫ばれる近年、人気が衰えた感があります。 毛皮着て臆する心なくもなく 下村梅子 青き眼のさびしき毛皮売に逢ふ 中村若沙 『外套』。防寒のために服の上に着る衣服の総称。オーバーコートあるいは単にオーバーともいいます。厚手のウール生地が多いです。 外套を預け主賓の顔になる 森野 稔 外套のポケットの深さを愛す 片山由美子 『冬帽子』。冬にかぶる防寒用の帽子。素材や形はいろいろあります。もともとは、大正時代以降に紳士がかぶった帽子をさしたそうです。 居酒屋のさて何処に置く冬帽子 林 翔 くらがりに歳月を負ふ冬帽子 石原八束 『襟巻』。首に巻いて寒さを防ぐもの。マフラーのこと。絹、毛織物、毛皮、毛糸などでつくられます。 襟巻の狐の顔は別に在り 高浜虚子 マフラーを巻いて下校の顔となる 今瀬 博 『手袋』。防寒、保温のために手指を覆うもの。手套(しゆたう)ともいいます。儀式や業務に用いられ手袋は季語にはなりません。 手袋の赤きを少し後悔す 岡村敏子 哀しみのごとやはらかし革手套 永島靖子 『毛糸編む』。毛糸でセーター、マフラー、手袋などを編むこと。 毛糸あむ指の小さな傷がじやま 今井つる女 毛糸編む娘をとほく見てをりぬ 佐藤郁良 |
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