イラスト歳時記  ・朱赤のゆりの花     Summer・初夏 6月  




梅雨入りの宣言があってすぐの頃、自転車で行き帰りする通勤路沿いの家の、道路に沿ってしつらえてある、そう広くない花壇に朱赤のゆりが数本咲きました。蕾(つぼみ)だったのがいっせいに咲いたのでしょう。そこに、ゆりが植えてあることに気付いていなかったので、突如の出現でした。白色や薄っすらピンク色の可憐なゆりと違って、このゆりの花は、やや濃いめの鮮やかな朱赤一色で、見る人をくらくらさせます。フラッシュに眩(くら)んだときのように、目に強い残像が残ります。 『くらくら燃える 地を這って〜 あなたと越えたい 天城越え〜』(1986年、石川さゆり/天城越え)の歌を連想してしまいました。隣りに咲いている薄紫色や白色の花菖蒲と雰囲気がとても対照的です。1週間ほど経ったある日、数本のゆりは刈り取られたらしく、一本も残っていません。どこに飾られたのでしょうか。どこにお供えされたのでしょうか。鬼ゆりと違って、斑点もありませんでした。外来種なのでしょうか。名前も、花言葉もわかりません。どんよりした梅雨の時期に、ハッとさせる花でした。(2003年6月)

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