イラスト歳時記  ・シクラメン(篝火花)    Spring・春 2月  




花屋さんの店頭にとりどりのシクラメンがでまわる光景は、初冬からクリスマス、そして新年にかけての風物詩としてすっかり定着していますが、本来シクラメンは早春花であり、俳句では春の季語とされます。 南フランスやイタリア、シチリア島などの原産地では野豚がその球根を掘って食べることから、英語でSowbread(豚のパン)とも呼ばれ、そのため、明治初期、日本にシクラメンが入ってきた当初は、『豚のまんじゅう』と呼ばれていました。それではあまりにかわいそうだというので、植物学者・牧野富太郎博士が、『篝火花』という和名をつけました。花弁が反り返った姿は、夜間に漁に出て行く舟が、帰る浜辺の目印にするという篝火(かがりび)にどこか似ていますね。その後、まるいことを意味するCyclamen (英語のcycle=サイクル)という学名を直接使って『シクラメン』と呼ばれるようになりました。シクラメンの塊根(かいこん)が丸い球形であること、原種は花が終ると花梗(かこう)がくるりと丸くなることに由来しています。 真綿色のシクラメンは、以前イラストに描きましたが、今回は真赤とピンクのシクラメンを描いてみました。すっかり無彩色になった冬景色に、華やかな彩りを添えてくれるシクラメンですが、小椋佳作詞・作曲のあの『シクラメンのかほり』のイメージが強いのでしょうか、どこかうれいを秘めた雰囲気をもっているようです。小説家・劇作家であり、俳人でもあった久保田万太郎に次の一句があります。 ○シクラメン花のうれひを葉にわかち
                                                                               (2006年02月)

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