コラム  ・猿酒   
− 猿酒 −

焼酎がブームです。芋焼酎の蔵元では9月〜11月の期間、さつまいもの収穫にあわせて、焼酎の仕込みが始まり、どの蔵元でも芳醇な香りが漂うことでしょう。


もろみを蒸留して最初に垂れるアルコール度67%前後の原酎を初垂(はなたれ)と言います。花滴(はなたれ)とも書きます。


     『 初垂を酌みし夜の夢ましら酒 』 ワシモ


   − 今年も、初垂を蔵元で美味しく頂いた。それにしても、とても
     芳醇(ほうじゅん)だというましら酒(猿酒)は、一体どんな
     美味しい味がするのだろうか。−


猿酒とは、猿が木の実を蓄えていた樹木の空洞や岩の窪みに雨や露が溜まり、自然に発酵して酒となったもので、とても芳醇な味がすると言われています。霊薬との言い伝えもあります。事実はともかくとして、深山らしく風情があって面白く、秋の季語になっています(参考:俳句歳時記第三版/角川書店)。ましら酒とも言います。


「NPOシニア自然大学」というサイトを覗いてみると、「ましらざけ(猿酒)の会」という調査活動の自主サークルがあるようです。酒という酒はすべて飲んだという酒好きにとって、猿酒はどうしても飲んでみたい最後の酒なのかも知れません。


そう言うわけで、幻の酒・猿酒を探し求めて、深山に分け入ったのです。そうこうしているうちに、とある御宿にたどりつきました。


     『 赤々と猿酒に酔う狐宿 』 ワシモ


   − うめ〜なこの酒! だが待てよ? ここの女将(おかみ)にゃ〜
     尻尾(しっぽ)があるぞ! まあ〜いいか。酒が美味けりゃ! −


2001年7月1日の神戸新聞の記事に、竹林で突然、数百の切り株から酒がわいたという記事があります。数百の切り株の中に白く濁ったどぶろく状の液体がたまっており、ほのかに酒のにおいがしたと言うのです。切り株に木の実などが入って自然発酵したか、竹の糖分が発酵したのでしょう。


     『 朽ち竹に猿酒盈ちて夜青し 』 ワシモ


   − 深山を見ては、想い浮かぶのは猿酒のことばかり。青い夜だが、
     奥山のどこかで朽ちた竹が芳醇な猿酒を盈たして醸成している
     に違いないのだ。−


アフリカのタンザニアには、実際に竹の樹液が発酵してできるウランジ (ulanzi)と呼ばれる醸造酒があるそうです。オクシテナンセラ・アビシニカという竹の子の断面からしみ出た樹液が、自然に発酵して酒となったものを集めたものだそうです。


幻の酒・猿酒を探し求めて、深山に分け入ってみたい時節になりましたが、とても甘くて芳醇だと言われる猿酒は本当にあるのでしょうか。新酒の時季の、想像するだけでも楽しくなる猿酒の話でした。


【参考資料】
下記のサイトを参考にしました。
・「NPOシニア自然大学」
  → http://www.sizen-daigaku.com/naiyousakul.html
・2001年7月1日の神戸新聞の記事
  → http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sougou/010715ke14530.html
・ウランジ (ulanzi)については、「世界の酒事典」を参考にしました。
  → http://home.att.ne.jp/zeta/marti/jiten.htm



2004.10.06  
あなたは累計
人目の訪問者です。
 − Copyright(C) WaShimo All Rights Reserved. −