レポート  ・フランス、ドイツの菜の花畑   
− フランス、ドイツの菜の花畑 −

20余年振りに、ドイツ、フランスを訪れたのは3年前の2004年5月のことでした。フランスは、人口が日本の約半分の6100万人で、面積は日本の約1.5倍。大きな都市といえば、首都パリ(人口220万人)、マルセイユ(同80万人)、リヨン(同45万人)、ツールーズ(同40万人)、ニース(同35万人)ですから、農村部の多い国です。


スイスのローザンヌからパリまでは、フランス新幹線TGVで約4時間の旅でした。車窓から眺める景色で印象的だったのは、広々とした美しい菜の花畑の光景でした。その光景が終点のパリ郊外まで延々と続いていて絶えることがなかったのです。菜の花畑の多いことはドイツでも同じでした。このことは、ヨーロッパ諸国の農業政策とともに、環境問題、エネルギー問題に取り組む姿勢を物語っています。


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      → http://washimo-web.jp/Information/Nanohana.htm


ディーゼルエンジンは燃料費が安くてすむ一方、振動や騒音が大きいため、乗用車ではそれを防ぐ設計が必要なことから、もっぱらトラックや船舶などのエンジンとして使われていますが、わが国ではディーゼルエンジンの排出する粒状物質、いわゆる黒煙を嫌って、ディーゼルエンジンを排除する傾向にあります。


しかし、環境先進国であるドイツやフランス、イタリアなどのヨーロッパ諸国ではいま、ガソリンエンジンからディーゼルエンジンへの切り替え(ディーゼルシフト)が進んでいるのです。自動車メーカーもディーゼルエンジンの開発・製造の動きを強めています。オゾン層の破壊につながり地球温暖化の主要因と考えられる二酸化炭素の排出量はディーゼルエンジンの方がガソリンエンジンよりはるかに少ないという理由からです。


約百年前、ルドルフ・ディーゼルがディーゼルエンジンを発表したとき、彼はそれをピーナッツ油で動かして見せました。彼は、ディーゼルエンジンをいろいろな植物油で動かすことを考えていたのです。しかし、石油(軽油)のディーゼルエンジンが市場の人気を得たため、それは立ち消えになりました。


つまり、ガソリンエンジンが揮発性の高い化石系燃料(石油)でしか動かないのに対して、ディーゼルエンジンは、その特性として植物油や動物油脂で動くという利点を持っています。植物油や動物油脂、あるいは廃食用油を使って作ったディーゼルエンジン用燃料のことをバイオディーゼル(BDF)といいまが、バイオディーゼルを使用すると、軽油と比べて、炭化水素類や粒状物質などの排出量を減少できます。


ヨーロッパの多くの国々では最近、菜種油を直接精製して作ったバイオディーゼルが急激に普及していて、ドイツでは、すでに2000個所以上のバイオディーゼル専用のスタンドが配備されています。そのスタンドに行って、軽油80%と菜種油20%を混合してディーゼル自動車を走らせます。このように、ヨーロッパ諸国ではいま、石油を中心とする化石燃料からバイオディーゼルへの転換が着々と進められているのです。ヨーロッパの国々に菜の花畑が多いのはそのためです。


化石燃料がいつ枯渇するかわからないなかで、燃料を国内で生産することは、エネルギーの安全保障を改善することに他なりませんし、農産物の非食料・燃料への利用は、休耕農地活用対策の一環にもなります。アメリカですら環境保護の観点に加えて、エネルギー安全保障と農業政策の観点から植物性燃料の生産振興を図っています。


国連食糧農業機関(FAO)の統計によれば、二00三年のドイツ、フランスの菜種生産量はそれぞれ、三六四万トン、三三二万トンでした。それに対して、愛知県農林水産部の計算によれば、平成17年の国内の集荷見込みはわずか八八九トンでしかありませんでした。「菜の花畠に入り日薄れ・・・」と童謡唱歌「おぼろ月夜」に歌われた光景は、日本の原風景でした。日本でも、春になると津津浦浦に、菜の花畑が見られる原風景を取り戻して欲しいものだと思います。


とりわけ、全国に先駆けて春が訪れる鹿児島に菜の花のイメージはよく似合います。開聞岳を背にした池田湖畔の菜の花畑の風景や毎年1月に開催される指宿菜の花マラソンが全国的に知られていますが、菜種の生産量となると鹿児島県は、青森県の四五四トン、北海道の三六六トン、滋賀県の四五トンについで、十四トンに過ぎません。


種子島や奄美大島では、バイオマスエネルギーの原料として注目されているさとうきびが栽培されています。まさに観光イメージの通りに菜の花が栽培され、菜種生産の本場となれば、植物燃料立県かごしまも夢ではないのではないか、そんなことを考えてみるのです。


2004.06.10  
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